ゼントクオリジナル野菜の 誕生ストーリー
高度経済成長期の青果業界では「見た目の美しさ」や「安定した入荷量」「規格の統一」といった条件が重視され、本来野菜が持つ“おいしさ”は後回しにされていました。
私たちは、そんな状況を変えたいと考えました。
消費者のみなさまが本当に求めているのは「味」なのではないか。そう考え、“見た目”や“効率”だけではなく、“味にこだわった野菜”を届けたいという思いから、オリジナルブランド野菜の開発に取り組み始めました。
さらにもう一つ、大切にしているのが「農家の皆さんの努力がきちんと報われる」ことです。
売れにくい野菜ではなく、“消費者に選ばれる=売れる野菜”を農家の方々と一緒に育てていきたい。そんな思いを形にする中で、伊藤式栽培という手法にたどり着きました。
その特長が際立つ野菜として注目したのが「かぼちゃ」です。一般的なかぼちゃよりも糖度が高く、うま味と食味に優れた「プラチナかぼちゃ」の栽培に成功し、私たちのオリジナルブランド野菜開発の第一歩となりました。
私たちはまず、従来のかぼちゃ栽培における「早採り」という慣習に着目しました。一般的な栽培では、開花から40日ほどで収穫されるため、糖度は8度前後です。
一方で、プラチナかぼちゃは受粉から生育状態を見て約60日までじっくり育て、熟成させます。そして糖度を12~13度まで上げてから収穫します。さらに風乾させてから出荷することで、最終的には糖度16度を目安にしています。こうした長期熟成により、うま味とコクのある高品質なかぼちゃに仕上がるのです。
ただ、栽培期間が長くなることで病気へのリスクが高まり、当初は農家の方々から「本当に収穫できるのか?」という不安の声も多くありました。しかし、伊藤式栽培を忠実に実践していただいた農家の方が結果を出してくれたことで、他の生産者の方も前向きにチャレンジするようになり、現在では多くの協力を得られるようになっています。
伊藤式栽培の特長は「土づくり」と「栄養管理」にあります。
特に力を入れているのが、土壌内の善玉菌を増やすことです。善玉菌の働きによって土壌が健全に保たれ、病気に強く、健康的な作物を育てる土台がつくられます。さらに、栽培中の「肥料切れ」を起こさないよう、適切な管理で味にも徹底的にこだわっています。
2023年・2024年の猛暑の中でも、病害を最小限に抑えながら安定した収穫量を実現することができました。
また、北海道で栽培している「ダイヤモンドかぼちゃ」は、最高糖度30度という非常に高い品質を誇ります。かつては保存方法が確立しておらず、2019年の出荷では、出荷したものの約半数が腐ってしまったという失敗もあります。しかしその後、微生物を活用した保管方法を研究・導入し、現在では安定した品質でお届けできるようになりました。
現在、青森県の農協さんと連携しながら、プラチナかぼちゃの栽培に取り組んでいます。スタートとなった2022年は、4軒の農家の方にご協力いただきました。当初は新たな栽培方法への戸惑いもありましたが、その中で特に高い成果を上げた農家の方の取り組みが評価され、翌年以降、協力していただける農家さんが増加し、2025年には15軒へと拡大しています。
2024年からは「伊藤式栽培研究会」を発足し、作付け会議、栽培講習会、圃場(ほじょう)巡回、収穫後の反省会など、年間を通して交流と学びの場を設けています。特に反省会では、成果に応じた表彰式を実施し、「多収穫栽培賞」や「高糖度賞」など、生産者の方々の努力と結果をしっかり評価しています。
農家のみなさんと同じ目線で向き合い、継続的に支援しながら、共に成長していける関係づくりを大切にしています。
年々、地球温暖化の影響が深刻化し、夏の気温はますます高くなっています。
このような環境変化に対応できる農業が求められる中、伊藤式栽培はますます注目を集めるようになると考えています。もちろん手間がかかり、生産コストも上がるため、農家の方にとって導入には抵抗感があるのも事実です。しかし、成果を実感した農家さんが増えてきたことで、導入のハードルは徐々に下がってきています。
現在は、プラチナかぼちゃやダイヤモンドかぼちゃをはじめ、おたふくピーマン、塩トマト・ミニトマト(赤い宝石)、ホワイトトウモロコシ(純白の天使)といった品目で伊藤式栽培を展開中です。
これからも、気候変動に負けない、そして“味”に妥協しないオリジナル野菜づくりを追求していきます。